簿記2級を勉強していて、減価償却方法の1つである定率法で償却額を算出する際に用いる償却率について2点気になりました。
1.償却率がどのように導出されるのか
2.定率法の計算で何故残存価額になるのか
この記事ではこの疑問について考えた結果をまとめます。初めに償却率の公式を示しておきます。
$$\alpha=1-\sqrt[\Large n]{\frac{\small X_0}{\small X}} \tag{1}$$
$$\begin{align}\alpha&:償却率\\
n&:耐用年数\\
X_0&:取得価額\\
X&:残存価額\\
x_i&:i年目の償却額\end{align}$$
年間償却額は式(2)で計算されます。
$$\Large 償却額=未償却残高×償却率 \tag{2}$$
償却率\(\alpha\)は取得価額に対する償却額の割合を表すので、\(1-\alpha\)は償却後に残る金額の割合になります。図1は取得価額から\(n\)年目まで定率法で減価償却を繰り返した時の図です。\(n\)年間減価償却を行うということは取得価額に対して\(1-\alpha\)を\(n\)回繰り返しかけることになり、その結果残存価額となるため式(3)の関係があります。
$$X=(1-\alpha)^n X_0 \tag{3}$$
図1
この関係から償却率\(\alpha\)を計算しているようです。この計算は後ほど行います。次に4年間定率法で減価償却を行ったときの計算をしていきます。4年目の未償却価額が残存価額です。2年目以降は前の年の結果を代入しています。
1年目の償却額
$$x_1=\alpha X_0 \tag{4}$$
2年目の償却額
$$\begin{align}x_2&=(X_0-x_1)\alpha \\
&=(X_0-X_0\alpha)\alpha \\
&=(1-\alpha)\alpha X_0 \tag{5} \end{align}$$
3年目の償却額
$$\begin{align}x_3&=(X_0-x_1-x_2)\alpha \\
&=\{(X_0-x_1)-x_2\}\alpha \\
&=\{(1-\alpha)X_0-(1-\alpha)\alpha X_0)\}\alpha \\
&=(1-\alpha)^2\alpha X_0 \tag{6} \end{align}$$
4年目の償却額
$$\begin{align}x_4&=(X_0-x_1-x_2-x_3)\alpha \\
&=\{(1-\alpha)^2 X_0-(1-\alpha)^2\alpha X_0)\}\alpha \\
&=(1-\alpha)^3\alpha X_0 \tag{7} \end{align}$$
4年目の残存価額
$$\begin{align}X&=X_0-x_1-x_2-x_3-x_4 \\
&=\{(1-\alpha)^3 X_0-(1-\alpha)^3\alpha X_0)\} \\
&=(1-\alpha)^4 X_0 \tag{8} \end{align}$$
定率法により残存価額を計算して得られた式(8)は、式(3)を\(n\)=4とした時と同じ式となっています。以上の計算を表したのが図2になります。
得
価
額
図2
式(2)から償却率\(\alpha\)を求めてみます。
$$\begin{align}X&=(1-\alpha)^n X_0 \\
(1-\alpha)^n&=\frac{X}{X_0} \\
1-\alpha&=\sqrt[\Large n]{\frac{X}{X_0}} \\
\alpha&=1-\sqrt[\Large n]{\frac{X}{X_0}} \tag{9} \end{align}$$
式(1)の公式と同じ形となりました。以上が導出になります。今回の内容は理解していなくても問題ないと思いますが、定率法で引っかかっていたので同じような人の参考になれば幸いです。
参考文献
独学応援!ホントに理屈っぽい簿記2級 商業簿記、ふくしままさゆき