【高校物理:力学】等加速度運動の基本公式(+ジャーク)

 今回は等加速度運動の基本的な式についてまとめます。この記事で使用する物理量についてはこちらの記事にまとめています。

1.等加速度運動

 等加速度運動はその名前の通り加速度が一定の時の運動のことです。一定の加速度で速度が変化することになります。初速度と加速度が同じ向きの同一直線上での運動とします。身近な例では、止まっている電車が動き始めてある速度まで加速する運動があります(実際は厳密に一定というわけではないですがイメージとしてはそんな感じです)。等加速度運動では基本的な3つの式があり、今回はその公式について説明していきます。初めに公式を示します。

$$\boldsymbol{v}=\boldsymbol{v_0}+\boldsymbol{a}t \tag{1}$$

$$\boldsymbol{x}=\boldsymbol{x_0}+\boldsymbol{v_0}t+\frac{1}{2}\boldsymbol{a}t^2\tag{2}$$

$$2\boldsymbol{a}(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{x_0})=\boldsymbol{v}^2-\boldsymbol{v_0}^2\tag{3}$$

$$\begin{align}\boldsymbol{x}&:位置[\mathrm{m}]\\
\boldsymbol{x_0}&:初期位置[\mathrm{m}]\\
\boldsymbol{v}&:速度[\mathrm{m/s}]\\
\boldsymbol{v_0}&:初速度[\mathrm{m/s}]\\
\boldsymbol{a}&:加速度[\mathrm{m/s^2}]\\
t&:時間[\mathrm{s}]\end{align}$$

 これらの式は丸暗記するより式の意味を理解する方が覚えやすいです。各節で式に名前を付けていますがこのブログで勝手に言っているだけで、一般的なものではないです。1つずつ説明していきます。

1.1.速度の式(1)

$$\boldsymbol{v}=\boldsymbol{v_0}+at \tag{1}$$

 左辺が速度になっている式です。右辺の第1項の\(\boldsymbol{v_0}\)は初速度で、運動を考える時に物体が最初(\(t\)=0[s])に持っている速度のことです。第2項は加速度と時間の積です。単位で考えると\(\boldsymbol{a}[\mathrm{m/s^2}]×t[\mathrm{s}]=\boldsymbol{a}t[\mathrm{m/s}]\)となり速度となることがわかります。この式を表したのが図1の\(\boldsymbol{v}\)-\(t\)グラフです。

\(t…
\(t…
\(v…
\(v…
\(v…
\(v…
\(a…
\(v=v_0\)

%3CmxGraphModel%3E%3Croot%3E%3CmxCell%20id%3D%220%22%2F%3E%3CmxCell%20id%3D%221%22%20parent%3D%220%22%2F%3E%3CmxCell%20id%3D%222%22%20value%3D%22%20style%3D%22shape%3DcurlyBracket%3BwhiteSpace% 3Dwrap%3Bhtml%3D1%3Brounded%3D1%3BflipH%3D1%3BlabelPosition%3Dright%3BverticalLabelPosition%3Dmiddle%3Balign%3Dleft%3BverticalAlign%3Dmiddle%3BfontSize%3D25%3B%22%20vertex%3D%221%22%20parent%3D%221%22%3E%3CmxGeometry%20x%3D%22560. 0081250000002%22%20y%3D%22200%22%20width%3D%2220.000312500000003%22%20height%3D%22160.0000000000000000006%22%20as%3D%22geometry%22%2F%3E%3E%3C%2FmxCell%3E%3C%2FmxGraphModel%3E
%3…
\(a…
等速直線運動
等速直線運動
等加速度運動
等加速度運動

%3CmxGraphModel%3E%3Croot%3E%3CmxCell%20id%3D%220%22%2F%3E%3CmxCell%20id%3D%221%22%20parent%3D%220%22%2F%3E%3CmxCell%20id%3D%222%22%20value%3D%22%20style%3D%22shape%3DcurlyBracket%3BwhiteSpace% 3Dwrap%3Bhtml%3D1%3Brounded%3D1%3BflipH%3D1%3BlabelPosition%3Dright%3BverticalLabelPosition%3Dmiddle%3Balign%3Dleft%3BverticalAlign%3Dmiddle%3BfontSize%3D25%3B%22%20vertex%3D%221%22%20parent%3D%221%22%3E%3CmxGeometry%20x%3D%22560. 0081250000002%22%20y%3D%22200%22%20width%3D%2220.000312500000003%22%20height%3D%22160.0000000000000000006%22%20as%3D%22geometry%22%2F%3E%3E%3C%2FmxCell%3E%3C%2FmxGraphModel%3E
%3…
\(v…
1[s]
1[s]
\(O…
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図1

 縦軸が速度\(\boldsymbol{v}\)、横軸が\(t\)の1次関数になっています。加速度\(\boldsymbol{a}\)が傾き、初速度\(\boldsymbol{v_0}\)が切片です。縦軸の速度\(\boldsymbol{v}\)を求める式になります。加速度が0[\(\mathrm{m/s^2}\)]の時式(1)は\(\boldsymbol{v}=\boldsymbol{v_0}\)となり、図1の青線のように速度は変化しないので時間によらず初速度\(\boldsymbol{v_0}\)のまま進み続けます。この運動は等速直線運動になります。上で説明した第1項のことです。

 次に初速度\(\boldsymbol{v_0}\)=0[m/s]の時、式(1)は\(v=at\)になります。加速度は1[s]でどれだけ速度が変化するかを表すので、加速度に時間\(t\)をかけると\(t\)[s]で変化した速度を表します。上で説明した第2項のことです。この増加した速度と、初速度\(\boldsymbol{v_0}\)を合わせると式(1)になり、時刻\(t\)における等加速度運動の速度\(\boldsymbol{v}\)を表します。等速直線運動に対して、時間の経過により速度が一定割合で増加しています。

1.2.位置の式

$$\boldsymbol{v}=\boldsymbol{x_0}+\boldsymbol{v_0}t+\frac{1}{2}at^2\tag{2}$$

 左辺が位置を表します。右辺第1項の\(\boldsymbol{x_0}\)は初期位置です。\(t\)=0[s]の時の位置のことで、時間が経過しても値は変化しません。初期位置を原点と設定すると\(\boldsymbol{x_0}\)=0となり省略できます。第2項と第3項は時間の経過による位置の変化を表し、初期位置と合わせて式(2)は時刻\(t\)における位置\(\boldsymbol{x}\)が求まります。第2項と第3項について図2と小学校で習う式を使って説明します。

$$距離=速さ×時間\tag{4}$$

\(t…
\(t…
\(v…
\(v…
\(v…
\(v…
\(a…
\(v…
\(\…
\(v…
\(O…
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図2

 図1と同じ図です。ここでは面積に注目します。この図の縦軸は速度\(\boldsymbol{v}\)、横軸は時間\(t\)でなので、式(4)の通りに速度と時間をかけると図2では面積になります。図2の面積は位置を表しています。黄色い領域は第2項の\(\boldsymbol{v_0}t\)を表していて、時間によらず一定の初速度\(\boldsymbol{v_0}\)と時間\(t\)の積なので式(4)そのままです。次に加速度による速度の増加分ですが、投下速度運動では一定の割合で速度が増加するので面積は青い領域の三角形になります。加速度による速度の増加は先ほど説明した通り\(\boldsymbol{a}t\)で、時間は\(t\)なので、その面積は\(\frac{1}{2}\boldsymbol{a}t^2\)になります。式(2)の第3項と同じですね。図2は時間\(t\)と速度\(\boldsymbol{v}\)の関係なので第1項は出てきませんが、初期位置が原点ではない場合\(x_0\)を追加すると式(2)となり時刻\(t\)における位置が求まります。図2は\(\boldsymbol{v}\)-\(t\)グラフなので\(\boldsymbol{x_0}\)は出てきませんが、\(\boldsymbol{x}\)-\(t\)グラフを書くと出てきます。

 式(1)と式(2)は微積を使っても簡単に導出できます。微積を使った記事もそのうち書く予定です。

1.3.時間を消去した式

$$2\boldsymbol{a}(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{x_0})=\boldsymbol{v}^2-\boldsymbol{v_0}^2\tag{3}$$

 \(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{x_0}\)の部分は運動の前後での位置の変化を表しています。これを変位と呼びます。運動前の点\(\boldsymbol{x_0}\)からみて運動後の点\(\boldsymbol{\boldsymbol{x}}\)への位置ベクトルです。この式は新しいものではなく、式(1)と式(2)から時間\(t\)を消去した式です。式(1)の左辺が\(t\)となるように式変形して、式(2)に代入します。頑張って計算すると式(3)が得られます。余裕がある人は計算してみてください。導出方法からわかるようにこの式では時間\(t\)が無くなっています。問題文で時間が\(t\)出てきていなかったり求める必要がない時にこの式の威力が発揮されます。運動前後の速度と位置の状態がわかれば一発で答えが求まる場面があります。下の例題でそれを確認します。

 式(3)は式(1)、式(2)と比べて意味がわかりずらいと思います。私が受験生の頃はこの式をよくわかっていなくて上手く使えていなかったような気がします。この式の意味としては力学的エネルギー保存則を表しています。初学者の方は何の話かわからないと思うので読み飛ばしてください。これからする内容の記事の時に戻って来れるようにします。式(3)の両辺に\(m\)/2をかけると式(5)になります。

$$m\boldsymbol{a}(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{x_0})=\frac{1}{2}\boldsymbol{v}^2-\frac{1}{2}\boldsymbol{v_0}^2\tag{5}$$

 \(m\boldsymbol{a}\)は運動方程式から力\(\boldsymbol{F}\)になり、それに変位\(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{x_0}\)をかけているので左辺は仕事になります。右辺は運動エネルギーそのものです。仕事の大きさと運動エネルギーの変化を表す式になります。また、加速度\(\boldsymbol{a}\)を重力加速度\(\mathrm{g}\)にすると左辺は位置エネルギーにとなり、位置エネルギーの変化と運動エネルギーの変化が等しいこと表す式になります。

3.まとめ

3.1.前回の例題解説

例題

 時刻\(t\)=0[s]で静止していた電車が1.5[m/s\(^\mathrm{2}\)]の加速度で動き出し、20[s]の間一定の加速度で運動した。120[s]一定速度で進んだ後、-1[m/s\(^\mathrm{2}\)]の加速度で運動を続けて静止した。静止した時刻\(t_1\)を求め、この運動について加速度\(\boldsymbol{a}\)と時間\(t\)の関係(\(\boldsymbol{a}\)-\(t\)グラフ)、速度\(\boldsymbol{v}\)と時間\(t\)の関係(\(\boldsymbol{v}\)-\(t\)グラフ)をそれぞれグラフに表せ。加速度\(\boldsymbol{a}\)と速度\(\boldsymbol{v}\)を縦軸とし、時間\(t\)を横軸とする。

解説

0~20[s]
 加速度1.5[m/s\(^\mathrm{2}\)]で20[s]加速した時の速度は30[m/s]になります。この間傾き1.5[m/s\(^\mathrm{2}\)]で速度が増加します。加速度は1.5[m/s\(^\mathrm{2}\)]で一定です。

20~140[s]
 速度は先ほど計算した30[m/s]で一定になります。速度が一定なので加速度は0です。

140[s]~
 加速度-1[m/s\(^\mathrm{2}\)]で速度30[m/s]から0[m/s]に変化するのにかかる時間\(\Delta t\)は式(6)を使って求まります。

$$a=\frac{\Delta \boldsymbol{v}}{\Delta t}\tag{6}$$

$$\Delta t=\frac{0-30}{-1}=30[\mathrm{s}]\tag{7}$$

 時刻\(t_1\)はここまでの時間の合計で\(t_1\)=170[s]と求まります(20[s]+120[s]+30[s])。速度は傾き-1[m/s\(^\mathrm{2}\)]で減速し、加速度は-1[m/s\(^\mathrm{2}\)]で一定になります。ここまでをグラフにまとめると図2(\(\boldsymbol{a}\)-\(t\)グラフ)、図3(\(\boldsymbol{v}\)-\(t\)グラフ)になります。

\(O…
\(\…
\(t…
1.5
1.5
20
20
140
140
-1
-1
=170
\(t_1\)…
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図2 \(\boldsymbol{a}\)-\(t\)グラフ

\(O…
\(\…
\(t…
30
30
20
20
140
140
=170
\(t_1\)…
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図3 \(\boldsymbol{v}\)-\(t\)グラフ

3.2.実用例

 高校物理とは関係ない余談になりますが、この例題の話が日常生活でどう役立っているかについて少し深堀してみます。興味がある人だけ読んでください。例題のように静止している物体が加速した後一定速度で移動し減速して再び静止するという運動はよくあります。身近なものでは電車や自動車等の乗り物はこのような運動をしていますね。工場にあるような産業用の機械装置の一部分の部品や、回転運動が混ざりますがロボットのアーム等も同じような運動をします。

 ここで問題になるのが、加速をし始めた瞬間。加速が終わった瞬間、減速が始まった瞬間、減速が終わったです。ここでは図4、図5のように30[s]までの加速部分について見ていきます。それぞれグラフが2つずつありますが今は左の方だけ見てください。加速度の方はt=0[s]で0[m/s\(^\mathrm{2}\)]だったものが一瞬で1.5[m/s\(^\mathrm{2}\)]まで上昇し、t=20[s]で再び一瞬で0[m/s\(^\mathrm{2}\)]に戻っています。t=0[s]、20[s]で速度はどうなるか見てみると、t=0[s]では急に速度が増加し始め、t=20[s]では急に速度の増加が終わり不連続に変化しています。実際には一瞬で加速度が増加することはなくて現実的には0.1[s]のような非常に短い時間で変化したことになります。このグラフのような運動は電車が動き出した瞬間にガクンと揺れて反対方向に引っ張られる時や、車で止まってる状態からアクセル全開で急発進した時のイメージです。乗り心地は悪いですし電車だと転倒の危険性があります。加速が止まった瞬間も同じです。機械装置やロボットで速度が急激に変化すると衝撃が加わることになり部品が破損しやすくなります。

\(\…
\(t…
1.5
1.5
20
20
\(O…
30
30
\(\…
\(t…
1.5
1.5
20
20
\(O…
25
25
5
5
30
30
①ジャーク無し
①ジャーク無し
②ジャーク有り
②ジャーク有り
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図4

\(O…
\(\…
\(t…
30
30
20
20
30
30
\(O…
\(\…
\(t…
30
30
5
5
30
30
25
25
20
20
3.75
3.75
26.25
26….
①ジャーク無し
①ジャーク無し
②ジャーク有り
②ジャーク有り
①ジャーク無し
①ジャーク無し
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図5

 この問題は加速度が一定という等加速度運動という制限の中で考えているため起きます。では加速度にも変化率があるのかというとあります。ジャークとか躍度とか加加速度とか言われます。単位は[m/s\(^\mathrm{3}\)]です。高校物理では出てこないので安心してください。速度と加速度の関係と同じで、一定のジャークを与えると加速度は一定割合で増加します。この時の加速度が図4の右側のジャーク有りの図です。5[s]かけて加速度が変化するように設定しました。青色部分(0~5[s]、20~25[s])が一定のジャークで運動している部分です。図5のジャーク有りの速度を見ると、この領域では速度が滑らかに変化しています。ジャークを与えることで乗り心地を改善したり、部品の破損のリスクを軽減することができます。縦軸に計算してみた数値を入れていますが気にしなくて大丈夫です。力学の基本中の基本である速度や加速度の概念だけでも機械を設計する上で重要で役に立っています。物理は面白くて実用的な学問です。受験生じゃなくても、身の回りで物理がどう役立っているかわかると面白いと思うので興味があれば勉強してみてください。

 おまけです。ジャークの基本的なことは書いたのでわからなければ飛ばしてください。加速度のグラフでは面積が速度になり、0~5[s]でジャーク無しと比較して面積が半分不足しています。20~25[s]の部分があることによってジャーク無しと面積が等しくなり速度が同じになります。速度の方ではジャークを与えると滑らかになった分、0~5[s]で速度が遅れています。等加速度運動が終わった時点では最高速度に達しておらず、20~25[s]の部分によってジャーク無しの速度に追いつきます。加速度の時の説明と同じことです。実際にどのように設計されているのかはまではわかりませんが、20[s]時点で速度が一致するように前倒しで加速度を与えて動きを制御しているのではないかと思います。

3.3.例題

 秒速11[m/s](時速約40[km])で進んでいる自動車がブレーキをかけて-5[\(\mathrm{m/s^2}\)]で減速し静止した。ブレーキをかけた時の時刻を\(t\)=0[s]、位置を\(\boldsymbol{x}\)=0[m]とする。静止した時刻\(t_1\)と、静止した位置\(x_1\)を求めよ。また、自動車の速度\(\boldsymbol{v}\)が秒速16.5[m/s](時速約60[km])、秒速22[m/s](時速約80[km])で進んでいた場合について同様に静止した位置\(\boldsymbol{x_2}\)、\(\boldsymbol{x_3}\)をそれぞれ求めよ。

 位置\(\boldsymbol{x_2}\)、\(\boldsymbol{x_3}\)は時間を求める必要がないのであの式が使えそうですね…。0.3Gのブレーキで人は不快に感じるそうなので(参考文献2)、それより大きめの約0.5\(G\)(5[\(\mathrm{m/s^2}\)])を急ブレーキとしました。次回の記事で例題の解説をします。次回は自由落下と放物運動についてです。今回はここまで。

 参考文献
1.浜島清利、物理のエッセンス 五訂版、河合出版、2023
2.国土交通省、”交通事故削減のための更なる効率的・効果的な取り組み”、https://www.mlit.go.jp/common/000221867.pdf、p.5、(2025/4/19)
3.漆原晃、漆原の物理 明解解放講座(四訂版)、旺文社、2019
4.広江克彦、趣味で物理学、理工図書株式会社、2015

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